--.--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


2007.05.07

病室の記憶

昨日雨の中、近所のお婆さんが来て、やはり近所の人で入院している S さんのお見舞いに車で乗せて行ってほしいと頼まれた。

朝から手土産のあんぱんを作り、病院へ向かった。
あんぱん


頼みに来たお婆さん自身も交通事故で6か月入院していて、つい最近退院したばかり。
「一生懸命リハビリ努力したよ。元に戻らなくったっていいんだよ。神社の碑の掃除ができるまでに治ればいいんだ。」
彼女の掃除する碑とその周辺の花は、主を得てまたきれいになっていた。


病室に入ると、Sさんは唸っていた。
声をかけると、「苦しい」とかろうじて訴える。

Sさんも実によく人の世話をする。
働く気のない隣家の男にもエサを与える。隣の男はまだ50代そこそこの健常者。犬を拾って来ては餌も散歩もさせず、結局、Sさんが犬のついでに男にもエサを与える。職場も何度か斡旋してやっている。
あまりの汚さに家の掃除までしてやっている。
男は仲間の浮浪者を連れてきて、Sさんに家に上がりこんでエサと風呂をねだる。

Sさんは顔を動かすこともできずに枕に頭をうずめて、わずかに開いた口が渇いていた。目の前にある水のボトルにも手を伸ばせる状態ではない。

わたしが麦茶のボトルにストローを差し、口にはさんであげると、最初なかなか口元まで上がっていかない水位が、少しずつ上がり、喉へと流れるようになる。

「お腹がすいても食べられないんだよ。水が飲みたくても飲めないんだよ。」と小さな声で言う。
病院はお膳を運んではくれる。
時間になれば、手をつけていないお膳を片づけてくれる。
ご親切なことだ。

こう訴えるのはSさんだけではない。
私の母が入院した時もそうだったのでよく知っている。
ボケたわけでも、暴れるわけでもないのに集中治療室で母はベッドに手を縛りつけられた。恐ろしかったという。

母が4人部屋にいたとき、ほかの階から少々騒がしい老女が車椅子で移ってきた。
意固地になっているのか怖い顔をしていた。
彼女は、ベッドで寝かせて欲しいと何度も何度も看護師たちに愛玩するのだが、病院側は車椅子に座らせる方針だといって、車いすに乗せたままだ。
2月。病院内とは言え、寒い。車椅子の老女は足も胸もはだけていた。家族はなかなか見舞いに来られないらしい。
徐々に抵抗する力もなくなっていく老女。
私は見かねて毛布を絡ませる。

食事の時間。運ばれたお膳を眺めるしかない老女。
最初はスプーンを持たせてあげても怖い顔をしていたが、何日かすると顔が和らいだ。
1,2週間たっただろうか、笑顔も見せてくれるようになり、回復しているものと私は思っていた。

が、いつものように病室に行くと、その老女のベッドは片づけられていた。

いつもの朝だった。・・・

------


Sさんの手にあんぱんをちぎって持たせると、ゆっくりゆっくり食べ始めてくれた。ストローを吸う力も少し出てきた。
やがてお昼の時間になり、お膳が運ばれてきたので、おかゆを口に入れてあげると、1/3杯くらい胃に到達したようだ。よかった。

また来るからね、と声をかけて、近所のおばあさんと病室を後にした。
スポンサーサイト

この記事へのトラックバックURL
http://ayeyai.blog90.fc2.com/tb.php/188-62ba3642
この記事へのトラックバック
コメントありがとうございます。
「編集」で書き直しできます。
AyeYaiさん
あなた優しいひとですね。そんなひととBlogとはいえ
知り合いになれて嬉しいです。
それにいつかアンパンもご馳走になりたいし・・・
Posted by Rickey at 2007.05.08 01:09 | 編集
ちっとも優しくなんてありませんよ。
やさしい人って自分に余裕がなくとも優しいですからね。私にはそれはできない。

今朝も昨日のおばあさんが来て、「病院に行くかい?」って。参ったな・・・。
Posted by AyeYai at 2007.05.08 09:18 | 編集
去年亡くなったお友達を思い出しました。彼も結婚せず子供もいず、最後まで一人ぽっち。近くに入院したらお見舞いにもいけたのですが、姪御さんの近くの病院に引っ越して行きました。そこはホスピスだったのですが。
日本も家族が病院に来ないと同じ様な状態なんですね。
寂しいですね。
Posted by chiblits at 2007.05.08 16:45 | 編集
Chiblitsさん、
長い話を読んでくださってありがとうございます。
どんな病院で過ごすかで、病気との付き合いはまったく変わると思うのですよ。
私もいつかその時が来たらホスピスに入りたいと思いますが、日本ではその数は少ないし、・・。
患者が希望する治療と、医師がやりたい治療はまるで違うことは納得がいかない・・。

Posted by AyeYai at 2007.05.08 20:42 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。